くにうみの先見

年金による国債引き受けという慣行がまかり通っている

こうした資産配分(アセットアロケーション)の判断こそ、資産運用の根幹です。個別の株の銘柄よりもこの資産配分によって運用成績の9割程度を説明することができると言われています。数字やデータだけでなく、世界の金融市場や経済での動きを把握し、キープレーヤーたちの動向に通じていることも不可欠です。

ところが、この大事な判断を国の年金運用では放棄しています。運用方針を検討する運用委員会を組織しておきながら、肝心なこうした戦略的な資産配分については行わないことになっているのです。実質的には、運用の9割を放棄していることになります。結局、昔ながらの年金による国債引き受けという慣行がまかり通っているのです。

内外の投資運用会社を使っているといっても、与えられた国内株式とか外国債券という資産配分の枠の中での仕事に過ぎないのです。運用成績への影響度という点では、資産運用の仕事の1割にしか過ぎない部分にのみ競争を導入しているのに過ぎません。

国民の年金の150兆円もの資金を動かせるはずがないと思うかもしれませんが、欧米の巨大金融機関の総資産は大体100兆円を超えていますし、200兆円を超えるところもあります。巨大資金の運用という意味では、日本の年金と同じ程度の規模の資産を思い切って動かしているところもあるのです。

日本の年金が現在のように資産配分の変更を放棄し、どんなに環境が変化しようと固定的な資産配分を変えないというのは、土砂降りでも傘もコートもなしに、じりじり照りつける夏の日差しでも帽子なしに、歩き続ける人のようです。それでは体を壊します。お金の運用でも、環境に適応した生き方が必要です。

では、日本国民の年金資金の運用はどう変わるべきなのでしょうか。

いくつかの提案をしましょう。

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