くにうみの先見

GPIFが公表した資産配分の“奇妙な前提”

国民の年金を運用するGPIFという組織は、資産運用の方針を決定するために、外部の専門家を含む運用委員会まで組織しています。一定の科学的見地に基づいて、資産配分の基本方針を決めることになっているのです。ところが、公表された資料を見ると、奇妙な前提が置かれています。

まず、国債を中心とした国内債券の期待収益率を3%、短期資産、つまり現金からの期待収益率を2%と置いているのです。しかし、現実には、国債の利回りは1.5%前後、現金に至ってはほとんどゼロのはずです。いや長期的には金利が上がるからいいのだ、と思うかもしれませんが、超低金利の国債を持っていて、実勢金利が上昇すれば国債は値下がりするのです。むしろ、長期的に期待される3%の金利に達しない時には国債への配分を減らすのが自然です。

さらに言えば、株式への期待収益率の前提も相当に不可解です。株式収益は今年のように、大暴落をする年もありますが、長期的には自己資本利益率(ROE)に近似します。もちろん、そうしたファンダメンタル(基礎的条件)を越えてバブルが上昇する時もあれば、今のように、ファンダメンタルをはるかに下回るところまで、株が下がることもあります。それだけに、株価が過熱していれば株への配分を減らし、株価が過度に安ければ配分を増やすことが必要になります。

もちろん、サブプライムローン(米国の信用力の低い個人向け住宅融資)問題のような金融環境や、上昇を続ける石油価格への読みなど、経済だけにとどまらない総合的な判断が必要とされます。現在のような、周期的に起きる金融危機やその前兆となる金融引き締めや、商品市場への投機マネーの集中などのような原因で、株式が下方にオーバーシュートする時には、思い切って株式への資金を一時的に引き揚げたり、ヘッジ手段を駆使することが必要となります。そして、下がりきって明らかに割安になったところからは、徐々に買い増していくことが必要になります。

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