くにうみの先見

低金利で発行した債券を、自社で買う財務部長などいない

こうして、国債金利が低下した90年代以降、国債に投資したことによる年金財政の逸失利益は巨大なものになります。

これが企業の財務担当であれば、理解し難い行動にしか見えません。低金利で調達した資金は、収益性の高い事業に投資するのが基本だからです。超低金利で債券を発行しておきながら、会社の資金でその債券を買う財務部長はいないでしょう。

ところが、財政全体で見ると、せっかく、1.5%という超低金利の国債で資金調達をしておきながら、年金資金の3分の2を超低金利の国債で運用しています。そのために、年金資産運用という事業の目的であるかつては5.5%、今でも3.2%という収益目標を100兆円の部分では最初から達成できずに逸失利益になってしまうのです。

かつて、年金資金が自動的に国に預けられていた財政投融資の時代と実態は変わっていないのです。国債の安定消化と超低金利の維持という、財務省の国債発行の都合が、国民の年金資産の運用への責任という受託者責任よりも優先されているのです。しかも、肝心の財政全体では、年金の赤字が財政赤字を拡大させているのです。

財政全体へのガバナンスも働いていないのです。まさに縦割りと前例踏襲の弊害です。

問題なのは、こうした資産配分の実態が覆い隠されていることです。

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