くにうみの先見

受益者負担の約束をホゴにすべきではない

 来年度予算で最大の問題になりそうなのが、道路財源の取り扱いです。少し解説しましょう。

小泉純一郎元首相が、道路はもう十分ある、だから、道路財源を他の予算にも回せるようにしよう、と言い出しました。これが、道路財源の一般財源化です。この方針を安倍晋三前政権も引き継ぎましたが、実行する前に政権が終わってしまいました。福田康夫政権はこの問題に決着をつけなければいけない運命にあります。

というのは、自動車ユーザーが負担している税金のうち、約2兆5000億円にも上る部分が、何もしなければ来年からなくなるのです。これが道路財源の暫定税率の上乗せ分です。

日本の自動車ユーザーは、消費税も含めて現在10種類、総額9兆円を上回る税金を払っています。このうち、揮発油税、軽油引取税、自動車重量税、自動車取得税、地方道路税については法律で決めた本来の税率のほぼ倍の税金を取っています。その上乗せ分だけで2兆5000億円余りに達します。

税金の上乗せが始まったのは1974年、田中角栄政権の時代でした。

日本は高度成長の真っ只中、石油ショックを跳ね返すためにも全国に道路を作るんだ、それには財源が足りないということで、税金を上乗せすることが暫定的に決まったのでした。

それが道路財源の暫定税率でした。受益者負担が大義名分でした。

道路が整備されれば自動車ユーザーはメリットがあるのだから、高い税金を負担するのは当然だ、ということでした。それから今に至るまで、道路整備5カ年計画が作られるたびに、暫定税率が維持されてきました。そして、今年度でその期限が切れるのです。

歴代自民党政権の大前提は、この暫定税率は維持し、自動車ユーザーから上乗せ分の税金を取り続けるというものです。

そのうえで、当時の小泉純一郎首相は一般財源化、すなわち社会保険庁の不始末の穴埋めでも銀行の不良債権処理の損の後始末にでも何でも、自動車ユーザーから道路整備のためにといって徴収した税金を充てる、と言ったわけです。

受益者負担の約束はホゴにされます。税の専門家でなくても、そんなことは筋が通らないことは分かります。もし一般の財政目的に充てるのであれば、消費税を自動車やガソリンにかければ終わりです。

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