くにうみの先見

20年間で逆さまになった常識

1980年代の行政改革を引っ張った土光臨調の目標は、財政再建であり「赤字国債撲滅」だった。財政赤字=赤字国債=「悪」という健全な常識がそのころの日本にはあった。おかげで、1990年代初めには、赤字国債発行がゼロに近づいた。
しかし、今では国債は「安全確実」、株や不動産はもちろん民間貸付も「危ない」、という常識がまかり通っている。
どうしてこのような常識の逆転現象が起きてしまったのか。それは、世界の金融機関を規制する国際決済銀行(BIS)が作ったルールのおかげである。
その結果、経済開発協力機構(OECD)の国債ならギリシャのように投資非適格のBB格でもリスクはゼロ、一方で企業の社債ならトヨタ自動車のようにAAA格でもリスクは100%という、後世から見たら摩訶不思議な「常識」が誕生したのである。
なぜ、こんな「常識」が必要だったのか。それは、米国が自国の赤字国債を何とか世界中に買わせたかったからだ。BIS規制が米国発のルールだと知れば、BISのからくりも解けてくる。
日本政府は、1980年代にはBISルールの採用を拒否していた。規制の中味が日本の金融機関には不利で、当時世界の資産を買い漁っていた日本の金融機関を狙い撃ちにしていたからである。
しかし、1993年になると突然、BIS規制を一転して採用する。何のことはない。日本が自ら大量の赤字国債の発行に踏み切ったからである。
以後、一貫して「リスク管理」と称して、“リスクがゼロの”赤字国債の買い入れを金融機関や年金に奨励してきた。堕落としか言いようがない。

Article / 記事


トップに戻る