くにうみの先見

「日米中経済同盟」へ

日米中の経済が、現在ほど相互依存関係が深いことはかつてなかった。日中、日米、米中、いずれも世界最大級の経済関係である。製造、サービス、消費、投資・金融、情報、知的財産、あらゆる分野に及ぶ。民間経済だけではない。中国と日本は、アメリカ国債の二つの最大の保有国でありアメリカの財政を支えている。
重要なのは、三国はいずれも中東からの石油輸入国であることで、本来の三国の立場は一致していた。
シーレーンの防衛など本来は、三国が協力すべきものと思う。
しかし、近年、アメリカではシェールガス・オイルが発見され、アメリカの一部では、「産油国」の立場の推進や中東石油への依存度の低下という考えも生まれている。さらに、日中両国が懸念すべきなのは、今アメリカでは、化石燃料の環境への悪影響を否定したり、世界の安全保障体制に対する責任を放棄したりするような考え方が、かなりの支持を得ていることだ。
第二次大戦後、アメリカは、世界銀行を中心に、敗戦国日本やドイツや、新独立国の多くに対して、世界銀行などのインフラ投資の仕組みを通じて大きな援助を行い、多くの国の平和的な発展に大きく貢献した。当時のアメリカは、圧倒的な貿易黒字国であり世界最大の債権大国であった。今、中国が、アジアインフラ投資銀行(AIIB)を設立し、アジアでの発展途上国のインフラ整備を推進しようとしている。AIIBには、ヨーロッパ諸国だけでなく、かつて中国と敵対関係にあったアジア諸国ですら参加している。アジア諸国がインフラ建設による平和的な発展を強く望んでいるからである。それは、アジア諸国だけでなく世界の安定のために重要であり、日中米三国全てに利益になるはずだ。
しかし、日本とアメリカはAIIBに参加せず、しばしば、外部からその運営に批判を加えている。なんと消極的な姿勢だろうか。日本の金融マンとして恥ずかしく思う。
日米両国は現実を直視すべきだ。アメリカは、いまや、世界最大の貿易赤字国であり債務国であり、知日中に財政を依存している。日本は貿易赤字国であり、OECD諸国で最悪の対GDP比の財政赤字を抱えている。世界銀行の運営中心者であるアメリカ、アジア開発銀行の運営中心者である日本は、いまこそ、その運営経験とノウハウを携えてAIIBに参加し、アジアのインフラ整備からの平和的な経済発展に協力するべきであり、それが、ひいては、世界と日中米三国の長期的な利益となる。
そして、アジアのインフラ整備の中心は、持続不可能な「石油経済」ではなく、今後20億年持続可能な太陽の恵みに基づく「太陽経済」の建設にすべきである。
今から約130年前の1887年に日本の中江兆民は「三酔人経倫問答」という著作の中で、自分の分身に「ヨーロッパ諸国の植民地争いに参加することなく、日本は中国と同盟して兄弟国になり、アメリカとも共同して、太平洋を平和の海にすれば、日中米は繁栄する。」という趣旨を語らせました。その中江兆民の親友であった玄洋社の頭山満と犬養毅は、今日のテーマでもある孫文を日本への亡命のたびに助け、二人だけが孫文の葬儀に招かれた日本人でした。私は、福岡の修猷館高校の出身であり、頭山満が作った玄洋社員で高校の先輩である広田広毅が作った「浩浩居」という学生寮の出身でもあります。
私は、「日中友好」から進んで、「太陽経済」を核心として、「日中米経済同盟」にまで至ることこそが、中江兆民が130年前に喝破した世界発展の戦略であり、孫文の目指したものの21世紀における実現でもあると確信している。

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