くにうみの先見

「太陽経済」とこれから来る危機

ここで言う「太陽経済」とは、単にソーラー経済という意味ではない。その始まりは、大震災以前にさかのぼる。

太陽経済というのは、2008年のリーマン・ショック直後から考えている概念である。太陽の光や熱、空の風、川の流れ、海の潮流といった太陽の恵みをエネルギーに変えることができるこの時代だ。資源・エネルギー浪費型の石油経済から、資源再利用・自然エネルギー中心の経済へ移行し、持続可能な共存共栄モデルを築く経済の提唱を始めた。

最初に太陽経済の理念について話し、共鳴いただいたのは、千葉商科大学学長の島田晴雄先生だった。多くの方のご支持を得て、2008年に一般社団法人 太陽経済の会を作り今に至るまで普及活動を行ってきた。

リーマン・ショックの後に来るものは、けして金融大恐慌ではない。現代の世界はそれに対する防火壁を持っている。金融機関の倒産・破産は国家が損失を引き受けるし、弱い国の財政や経済の破綻は国際的に救済するというメカニズムができている。

そのため、戦前のように連鎖倒産が世界大恐慌に結びついて、世界大戦への道を辿るということはない。また戦後の世界には、国連安全保障理事会によって大国間の戦争を起こさないという軍事の安全保障もある。

リーマン・ショックを経て、これから本当に来るのは人間の生存危機だ。その危機は、人間の繁栄によって引き起こされる。

20世紀初頭は16億人だった世界人口は今や70億人になり、やがて100億人に達しようとしている。寿命は昔の2倍になった。これはある意味では、人間の歴史上にかつてない大きな「繁栄」という形の大変化だろう。

長寿になり人口が増えたこと自体は喜ばしいが、今度は逆に、それが人間と地球の生存を脅かしている。ここで注意すべきは、「人間と生物」だけではなく、「人間と地球」の生存を脅かすであろうということだ。

この危機は具体的には、人間以外の種の絶滅が進み、気候変動と環境悪化が進むという形で現れる。人間の個体数が、圧倒的に増えている今、結局人間が自分を統御できるのか、そしてこの地球と共存できるのかという問題が出てきている。

長きにわたり人間はバイオマスによるエネルギーで暮らしてきた。その後石炭を得るようになり、それから石炭経済、石油経済と進み、原子力が加わった。しかし、これまでのような経済体系だけで突き進むことができる限界がきている。必然的に、太陽経済への転換を迫られている。

もちろん、太陽経済になったからといって、いきなり全部が太陽経済に移行できるわけではない。石炭、石油、原子力、どのエネルギーも一長一短あるけれどもいずれも使われている現実は受け入れなければならないだろう。原子力の廃絶といった問題もあるが、ここではその問題は措く。本質的は、人間にとってエネルギーが必要であることだ。

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