くにうみの先見

人民元のゆるやかな上昇が米中の利害に一致しだした

特に重要なのは中国の変化です。2005年までの中国の成長は外資企業頼みでした。特に人民元を安く保つことは、中国で生産し米国に輸入する主役である米国企業にとっては大きな利益の源泉でした。中国にとっても、安い人民元は外貨獲得の格好の手段でした。

それは、天安門事件で世界から孤立し外貨がほとんどなかった1989年に比べて、世界一の外貨準備を持つ現在の人民元が対ドルで半分にまで安くなっていることに表れています。黒字がたまるにつれて何度も円高の嵐に見舞われた日本と逆の経験です。米中経済がライバル関係ではなく補完関係にあるためです。

ところが、国営企業や銀行の不良債権処理を終え、国内企業中心、内需中心の経済成長に切り替えた2006年からは、むしろ、成長抑制、資源問題と環境問題の緩和、国内での格差の是正を行いたい中国と、中国への金融投資で収益を上げたい米国の金融界の利害が一致を始めました。

これまで「米中経済同盟」の象徴であった安い人民元政策は終わり、人民元の緩やかな上昇が双方の利益となり始めました。

新経済大国での為替の上昇は、言うまでもなく、世界の生産者物価を、低いレベルからですが、押し上げます。2006年からの世界物価の緩やかな上昇は、こうした為替市場の反転と軌を一にしています。もちろん、石油などの1次産品、新興国全般での物価と賃金の上昇も上昇圧力になります。

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