くにうみの先見

21世紀世界経済の最大のテーマはサブプライム問題の向こうにある

バーナンキ議長の行動は、too little, too lateです。市場型経済のメカニズムを熟知したグリーンスパン前FRB議長は、バーナンキ議長が重視するテイラールールやインフレターゲット論といった、常に市場より遅行するデータに基づく政策だけでなく、資産市場の変動と金融機関の流動性危機そのものへの対応をしましたから、金融危機を未然に防ぐことができました。

だから、グリーンスパン時代のFRBは、物価の変化をはるかに上回る大幅な金利の変更を行い、2000年には6.5%まで金利を引き上げ、2003年には1%まで、5%以上も金利を低下させました。その間、物価は1%しか低下していないのです。


グリーンスパン前議長は、古臭い金融理論をはるかに上回る金利の大幅な変動をさせることによって、逆に資産市場の変動を何とか抑えていたのです。短期金利と資金供給というかなり心もとないアクセルとブレーキで市場を操縦するためには、かなり思い切ったやり方をしないと通用しないのです。

この点を古典的な金融政策の信奉者としか見えないバーナンキ議長が理解せず、かつ、市場からの批判に耳を貸さなければ、今年も金利安定、資産市場と金融機関は乱高下、という年になるかもしれません。

そうはいっても、日本と違って、米国は市場経済を理解した人間が分厚く存在する国ですから、そんな中央銀行総裁の行動は抑制されると期待します。こうして見れば、サブプライム問題は、FRBがよほどひどい対応をしない限り、今年中に収束に向かうでしょう。

むしろ、サブプライム問題の雲の向こうに見えてくるのは、21世紀の世界経済の、最大のテーマであるグローバリゼーションを縦糸に、資源問題、インフレ、金融問題、景気、経済成長、各国の競争力、といった様々な横糸が絡まる姿です。それを読み解いてみましょう。

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