くにうみの先見

規制を撤廃すれば「農ビジネス」には大きなチャンス

まず注目したいのは、日本の「食市場」は売上高52兆円にもおよぶ国内最大級の産業であり、品質、安全性、価格、健康への影響などニーズも実に多様であるという点です。これらのニーズを的確に取り込むことができれば、産業としての発展を追求できます。巨大で複雑かつ顧客の要求水準が高い市場で鍛えられた商品としてその地位が確立すれば、輸出拡大も大いに期待できるでしょう。また、観光や医療と融合し豊かな農ビジネスが形成されれば、農業は最先端産業へと成長できます。

幸い、農業以外の産業分野に目を向けると、我が国にはニーズの開拓に必要な技術、人材、組織となり得る世界有数の経営資源が揃っています。開発、生産管理、販売とマーケティング、資金調達、輸送、IT技術、健康・医療分野の研究、バイオテクノロジー、これだけのノウハウを活用できれば、農業は強い競争力を身に付け国内でバリューチェーン(価値連鎖)が完結する自立した産業となるでしょう。

新規参入は農家や農協の立場を脅かすものではありません。むしろ、農家にとっては消費者ニーズの顕在化と生産、流通、販売の効率化が進むことによってコストの低下と売上増加が期待でき、農協にしてみれば顧客や提携相手が増えることを意味します。

農ビジネスの経営形態の多様化も考えられます。とりわけフランチャイズ・ビジネス方式は有効な経営形態になるかもしれません。日本の農家の大半を占める兼業農家は小規模であるため、高度な経営業務をフランチャイズ企業にアウトソーシングすることは大きなメリットとなるでしょう。

このように農ビジネスは新規参入による大いなる発展の可能性を秘めていますが、その最大の弊害が、自作農以外における農地の所有と使用を禁じる農地法などの規制です。自作農が耕作地を拡大するという農地法本来の目的も破綻しており、一刻も早い改正が求められます。いまは生かされていない農地の活用なくして、農ビジネスの成功はありません。

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