くにうみの先見

いまこそ農業の自立を

近年急増した製造業の中国など海外への進出は、大企業の収益を向上させる一方で、日本の国際収支の構造をも変化させました。日本の貿易黒字約10兆円に対して、農林水産物の貿易赤字が約7兆円、観光収支の赤字は実に約3兆円にも上ります。つまり、ものづくりで稼いだ外貨を食料と海外旅行に使っているというかたちが、今の日本の構図なのです。

製造業の海外進出は、今後ますます加速すると見られており、貿易黒字は縮小する一方、円安による輸入コストの増大を受けて、輸入依存にある日本の食料は重大な危機を迎えるでしょう。

さらに、BSE(牛海綿状脳症)や鳥インフルエンザ、国内基準をはるかに超える残留農薬が付着した野菜など、輸入食料の安全性に対する不安は高まる一方です。輸入依存の限界と安全性の問題により、日本は食の危機にさらされています。いまこそ農業が自立し元気になり、食の輸入依存体制を改善することが最重要の時代なのです。

残念ながら、現在の日本の農業に国際的な競争力があるとは言えません。しかしそれは農業自体に原因があるのではなく、日本の農業政策に根ざす問題です。農業保護を謳いながら衰退を招いた農業政策こそが抜本的に見直されるべきなのです。日本には変化に富んだ自然環境を生かして、誇るべき農耕文化を築いてきた歴史があります。農業が成長性のある産業に生まれ変わることは十分に可能なはずです。

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