くにうみの先見

フランチャイズという第三の道

農ビジネスにフランチャイズ・ビジネスの方式を導入すれば、個人か株式会社か、という以外の第三の農業経営の大きな可能性を開くかもしれない。すでに、食の分野ではコンビニ、ファーストフード、チェーンレストラン、パン屋などフランチャイズ・ビジネスが過去二〇年で大きく成長した。フランチャイズ・ビジネスは契約関係で成り立っている。かつての個人商店が店舗の敷地や建物を改装して加入することが多い。フランチャイズ・ビジネスは消費者と生産者・サービス提供者の両方を顧客にするところに特徴がある。ニーズ調査・商品開発、宣伝・広告、品揃え・仕入れ・配送、経理システム導入、教育訓練、一など個人商店では不可能な高度な業務を企業の本部で効率的に行うことで、消費者にとって魅力的な商品とサービスを提供できる。その対価として加盟店は本部に対して売上の一定部分などのロイヤルティを支払う。従来の個人商店にとっては、いまの消費者のニーズにあったものを提供でき、これまでの敷地や建物を生かして働き続けることができ、売上が増えれば収入アップにつながる。フランチャイズ企業にとっては、直営店を展開するのに比べてはるかに少ない資金と人員で、売上に連動した収入が得られる。
もちろん、うまくいかないケースも多いし、過重労働、契約違反や誇大な説明などの問題もみられるが、フランチャイズ・ビジネス同士の競争が激しく、また情報の公開も進み加入者の権利を守る法律と行政の仕組みも整ってくるから、不良なフランチャイズは今後淘汰されるだろう。フランチャイズ・ビジネスが日本でここまで大きく成長してきたのは、消費者・加盟店・企業のニーズがからみ合い、基本的には共存共栄の関係になっているからだろう。
日本の農家の大半を占める兼業農家の多くは小規模で経営資源がなく、しかし、農地を生かして農業を続けたいという点において、従来の個人商店に似ている。大規模な専業農家であっても消費者のニーズをとらえた農業経営は大変であり、大きなコストとリスクを伴う。フランチャイズ・ビジネスの参入は、株式会社が入ってくれば自分たちはやっていけなくなるという懸念をもつ農家に対しても共存共栄の一つの道を示すのではないか。
もちろん大きな違いは、農家の多数を占める兼業農家はコンビニの経営者のように専業ではないという点である。しかし、こうした兼業農家の多くは、農協に経営の多くをすでに事実上任せてきた。経営のアウトソーシング先が増えれば農家のメリットは大きい。フランチャイズ・ビジネスは生産者のニーズをできるだけ満たそうとするし、そうでなければ参加する農家がいなくなる。
たとえば、商品開発と生産管理技術によって、できるだけ少ない労働力の投入で高い品質と価格の農産物を作り上げる。あるいは、農作業は優秀な人材を派遣する会社に依頼して、生産委託する。そうした経営の多様性が進めば、農業はいまより取り組みやすい産業になる。オーナーとは別に契約社員として、新卒の若者や脱サラのサラリーマンにとっても農業が就職できる産業になり、担い手不足の問題は解消されるかもしれない。

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